洛陽→上海

三国志、関羽の墓がある寺の前の、ちょっとした広場。
小学校5、6年生ぐらいの男の子が、水をつけた筆で石畳に文字を書いている。

うまい。

とても小学生とは思えぬ端正な字と、的確な筆運び。
しばし見とれる。

ふと横を見ると、70歳ぐらいのおじいさんの姿。
男の子に習字を教えているのだろうか。

僕らが日本人旅行者だと知った彼は、にこっと笑いながら筆をとった。

次の瞬間、地面に配される鮮やかな字。
すばやいながらも緩急をつけた筆運びで、信じがたいほどにきれいな字をつづっていく。

唖然。

中国語で「洛陽へようこそ、日本人の皆さん」と書かれた石の上の文字は、
強い日差しでみるみるうちに乾いて消えていき、それが本当にもったいなく感じた。

しかしその字を見たときの感動は、今もしっかりと残っている。
字によってあそこまで感動させられたのは、初めてかもしれない。

僕の通っていた中学、高校では、毎週筆で好きな言葉を書き、提出することになっていた。
6年間続けた習字だが、高校卒業以来、そういえば一度も筆を握っていない。

帰ったら、久しぶりに筆で字を書いてみよう、と思った。