絵画を眺めること、音をつくること

先日、ホキ美術館に行ってきました。
北海道から一週間ほど東京にきていた父親と、
ドライブをかねて、首都高を走り湾岸道を抜けて到着。
千葉市緑区にあるホキ美術館は、
昨年11月にオープンした、写実絵画専門の美術館。

実は、写実絵画には、それほど関心がなかった。
「まるで写真みたい」
というありふれた感想に違和感を覚えて、
そして、その台詞が
僕の中に残り続けていたようで、
せっかく絵画を見るなら、
もっと想像の広がるものが見たい、
なんて生意気なことを考えていました。

でも実際に、自分の目で、
素晴らしい写実の作品を眺めていると
沢山の発見があったのでした。

たとえば、
グラスに注がれた透明な水のなかにも、
無数の色彩が潜んでいるということは、
写真を見ていただけでは、なかなか気づけなかったと思う。

その無数の色彩は、
作品にうんと近づいて眺めると、浮かび上がってきた。
少しの距離をおくと、写真のような光沢が生まれる。

*

近づいたり、離れたり、その動作を繰り返していると、
それが、音作り(ミックス作業)にもよく似ていると感じた。

サイン波以外のすべての音には、
複数の音波が含まれている。
たとえば、ギターの単音にも無数の音波が存在していて、
それを音源にするときには、
聴きやすくするため、心地よく聴かせるために、
様々な音波を強調したり削ったりします。
その作業中というのは、まさに、
絵画にうんと近づいて眺めている感覚。

そして、編集がすすんだら、
ギター以外の音と同時に鳴らしたり、
一般の環境にあるようなラジカセで
聴いてみたりするのですが、
それが、絵画の全体を眺める感覚。

近づきっぱなしでもダメだし、
離れっぱなしでも、退屈な仕上がりになる。
ふたつの動作を繰り返しながら、音をつくっています。


これって、日常生活でも、
いろいろ置き換えて考えられそう。
人との関係もそうだろうし、将来を考えることや、
料理をするとき、掃除をするとき、などなど。

近づいたり、離れてみたり。
その動作を繰り返すことを大事にできたらと思います。