奏でた音が、帰り道の人混みに吸い込まれないように

ある日の表参道からの帰り道、
新しく開通した副都心線で、のんびりと
明治神宮前から帰ろうと思ったけれど、
夜もだいぶ遅かったので、本数が少なく、
山手線で原宿から帰ることにしました。

多少の混雑は、覚悟していたけれど、
なんだか、いつもに増して人の数が多い。
どうやら代々木体育館あたりで、ライブがあったようで、
その歌手の(とても有名な人)のグッズを身につけた人がたくさん。

まいったなー、こんな混雑に巻き込まれるなんて。
時間はかかっても、副都心線を使えばよかったなぁと思いながら、
駅の階段のど真ん中で立ち止まっている人たちの間を抜けて、
少しでも空いてるホームへ歩こうとしていたとき。
そこにいた人(その歌手のグッズの帽子をかぶっていた)と軽く肩がふれて、
その瞬間、もの凄い形相をこちらにむけて、あからさまな舌打ち。

僕も、その日はだいぶ疲れていたので、
こころのなかではちょっとむっとしてしまったけれど、
少し頭を下げて、そのまま通り越していきました。

なんだか、少し、かなしい気分に。

素晴らしいライブを観た帰り道、僕にはいろんな思い出がある。
そんな時の心境は、いつも、
今まで目にしてきたあたりまえに存在していたものまでも、
きらきら輝いて見えてくるような気持ちが溢れていて、
これからの自分の日々がわくわくしてくるような、そんな感じ。

ライブを観に行った後、その内容がいまひとつの場合、
ときには、疲労感におそわれることもありますが、
確かに疲れはあっても、そんなことを忘れてしまうくらいの
大きな感動に満たされるライブもあります。


今回出会ったような数のお客さんが集うライブとは規模が違うけれど、
僕も、頻繁にライブをさせてもらう機会があります。

自分の奏でた音が、その日一瞬で、
帰り道の人混みに吸い込まれ、
消えていってしまうことのないように、
そして、あわよくば、
観に来てくれた人たちの
なにかしらの力になれるような、
そんなライブができるように、
ひとつひとつのステージと真摯に
向き合っていきたいと思ったのでした。