8時間の「戦い」

午前0時30分、スタジオ入り。

ほぼ同時に、「様子を見に行きます」と言っていた123レコードの浅田さん、
救援物資(食料)を持ってご来訪(ありがとうございます、わざわざ真夜中に)。

さて、ドラムを部屋の中央に移動し、マイクをセッティング。
マイクの位置や角度を入念に設定。
素早すぎて、はたから見ていると何をしているのかさっぱりわからない、
ハードディスクレコーダーをいじる森川の指さばき。
ベースもセッティング完了。
ヘッドフォンのモニターチェックもすませ、いざ録音開始。
……と、怒濤の8時間が幕を開けた。

まずは"melting into Einstein's brain"から。
epに入っているバージョンは、去年の夏に福島で録音したもの。
僕たちの曲の中ではもっとも古いこの曲、演奏がシンプルなだけに一つ一つの音が超重要である。

木下が「雰囲気だね。曲にスーって入り込めばいける。」と言った。
まったく同感。

録音している、と変に意識するとうまくいかない。
「"正確な音"というよりも、まず"伝わる音"を鳴らすようにしよう」ということになった。

次に"fantasmartyr"のドラムループを録音。
続いて"reason"、"clover"、"minty ocean"、"noise moonrise"……。

いつもと比べれば順調に進むレコーディング。

しかし……それは、午前6時半をまわった直後だった。
新しい歌ものの曲を録音後、確認のため聴いてみると、一番もりあがる部分で音が見事にとんでいる。

???

何かいやな予感。
そう、これは、夏に同じスタジオでレコーディングした時にも起きた現象だった。

もう一度録り直す。
聴く。
やはり同じところで、ブレイクビーツのごとくスネアロールがチョップされている。

ハードディスクの違う場所でもう一度録音し直しても、
レコーダーの電源を一度落としてみても、まったく同じ場所で音飛びが起こる。

もしや音量が大きすぎたり(?)、と入力レベルを下げても変わらず。
だが試しにその部分を、全く違う静かなドラムパターンに変えて録ってみると、何の問題もない。

背筋が凍る3人。
このスタジオには霊がいるのか?

1時間近く繰り返している内、やっとまともに録音できたから良かったものの、
あれは一体なんだったのか。

そしてその後の曲は、ほとんど気力で演奏。
最後の30分には幻聴まで聞こえ出す始末。

午前8時半、予定していた曲は、どうにか終了した。

レコーディングは辛い作業だ。
だが、同時にものすごく意味のある作業だと思う。
ここで録音した音が、euphoriaのCDを聴く人の耳に直接とどくのだから。


スタジオを出ると空はもう明るい。
日曜の朝のさわやかな表情の人々と、それとは対照的な精根尽きはてた自分。
通りを歩く人の波や駅の構内アナウンス、すべてが夢の中のようで、
ようやく家にたどり着いた僕は、即刻、深い眠りにおちていったのだった。