こころは僕に旅を続けてほしくないのです

北海道まで鈍行列車の旅。

いつもは飛行機で行っていたところを
昨年はちょっと気分を変えて、
寝台列車の北斗星の旅をしてみました。
そのゆったり感がなんとも心地よかったので、
今回はさらにゆったりということで、
特急列車を一切使わずに、
北海道に行く計画を立てたのです。

朝5時過ぎに家を出て、
9本の電車を乗り継ぐ鈍行列車の旅のはじまり。
その長い時間を見越して、
選び抜いた3冊の本をリュックに入れてきたけれど、
田舎の駅ののんびりとした雰囲気を味わったり、
車窓に広がる大きな風景に
引き込まれている時間がほとんどで、
結局、ちょうど1冊を読み終えたときに
青森駅到着、夜9:30頃。

盛岡を過ぎて、青森に向かうときに見えた、
穏やかで大きな田園風景。
なんだかわからないけれど、じーんとしてしまう。
東京で過ごす毎日が、いかに、
人と人との距離や、建物同士の距離が近すぎるのか、
そんなことを考えていました。
ほんとうは人間にとって
ものすごく過酷な日々を過ごしているのに、
良くも悪くもそれに対する違和感がなくなっているんだよなぁ。

読み終えた1冊の本というのは、
長めの旅行では、よく持ち歩いていて、
今までに何度も読んでいる、”アルケミスト”という物語。
高校生のときに、仲のよかった女の子に
誕生日プレゼントでもらったこの本。
相当、読み込んだので、そしてよく持ち歩いたので、
だいぶ古びてきているのですが、
ここには、いろんな思い出が詰まっています。
読むたびに引き込まれるポイントが変わってくるのがおもしろい。

「こころは僕に旅を続けてほしくないのです。」

「それは今までに得たものをすべて失うかもしれないと、
 こころは恐れているから」

「それならばなぜ、僕のこころに耳を傾けなくてはならないのですか?」

「なぜならば、こころを黙らせることはできないから・・・」

ゆっくりと移ろいでいく車窓からの景色を眺めながら、
そして、同時に自分のこころに耳を傾けながら、
物語はどんどんと広がっていったのでした。


今日は青森で一泊、
明日は、前々から行ってみたかった、
青森県立美術館に行く予定。
そして夕方、フェリーで函館へ。